2023-01-01から1年間の記事一覧

"劇場型"実存としての人間--『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』書評

澤田直は、近著『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』にて、<異名者>というコンセプトを持つポルトガルの国民的詩人・ペソアの魅力を紹介した。 <異名者>とは、自分とは異なる人格、外見、来歴、文体を持った別人格の作家のことで、偽名や筆名(…

会話か、文学か--『<呼びかけ>の経験 サルトルのモラル論』とリベラリズム

澤田直『<呼びかけ>の経験 サルトルのモラル論』人文書院(2002)は、サルトルのモラル論に関する、我が国随一の研究であると思われる。未完の設計図の断片を頼りに、巨匠サルトル自身すら思い至らなかったその思想の核心を剔抉し、幻の楼閣を現代に再現した…

法のまなざし、実存の叫び --サルトル実存哲学の法学的解釈・試論--

サルトルの実存哲学からは、アナーキーな香りがする。 現実=国家による統治と、それはいかにして接続可能か。 サルトルの実存哲学は、主体的な強い個人を主人公としている。が、その実存の根っこには「不安」がある。そしてその実存的不安は、他者との共生…